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13として働いてきました。行政機関での勤務でしたが、昇給もボーナスもなく、率直にいって不安定でした。 公務員は一般的に、男女格差が少ない職業だと言われますが、正規職員と非正規の間の格差は民間以上に大きいと言えます。加えて、非正規公務員の約8割は女性。その点から問題を考える必要があると考えてきました。 ニュースでも見かけるように、今、非正規公務員は急増しています。就労支援をするハローワークの窓口の人が、不安定な非正規労働者だという笑えない現実がまさに今、日本中にある。同様に、配偶者暴力相談支援センターなどの施設で、DV被害者支援に最前線で当たっている職員の多くも非正規で、不安定な雇用条件で働いています。さまざまなカタチで生きる人々がいるのが当然の社会 こうした問題は、公務員だけに限ったことではありません。多くの人々の生活を支えているエッセンシャルワーカーが、不安定な非正規労働の立場にあるという実態は、今回のコロナ禍でより注目されるようになりました。 そんなやりがい搾取が横行する要因として、「女性は家計の補助的な非正規労働でいい」「経済的に自立しなくていい」という、性別役割分業的な考え方に基づく家族観があるのだと思います。 その考え方が格差を生み出し、一方で「正規」のレールに乗っかることができた男性の方にも「結婚したら一家の稼ぎ手として大きなストレスを負うことが当たり前」という負荷を与えることでもあります。 さまざまなカタチで生きる人々がいるのが当然の社会の中で、男女のカップルで結婚して、男性は正社員で女性は非正規という構造を温存することに固執してきたことが、当事者たちはもちろん、社会全体に大きなストレスをかけている——。 それが今、多くの人々の日常に横たわっている「生きにくさ」の背景になっているのではないでしょうか。 女性達が、そして多様な生き方をしている人々が、当たり前に自分の人生を、自分で決めていける世の中になって欲しいと願っています。ジェンダー視点によって災害時の問題や支援を考察した『災害女性学をつくる』(生活思想社)。人々の暮らしを支える、各種相談員や図書館司書、保育士、女性関連施設の職員などの劣悪な待遇や現場の実態に迫る『官製ワーキングプアの女性たち』(岩波ブックレット)。いずれも共著。

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