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6触れてもらうことができるので、学園の教育をより理解してもらうことにもつながるのではないかと。そんな新たな可能性も担っていくと考えていました」。平時には見落としていた教科を超えた相乗効果 JIYUTubeの配信を始めるにあたっては、各教科の代表者やITスキルの高いメンバーによって編成された研究部で多くの議論が交わされていました。「教科として何を伝えるか?」ということから、そのためにどの学年にどういうカリキュラムを組むのかという教育課程についての議論。そして課題の量と質についての議論など多岐にわたります。 「実はこのJIYUTubeを始める際の話し合いの中で、これまでは良くも悪くも各教科に任されていた部分を広い視点で可視化することができたのです。ほかの教科が何をやろうとしているかを共有できたことは、怪我の功名かもしれませんが、今回の成果のひとつです」。そう振り返るのは中学校長でもある中野裕さん(数学科)。各教科が撮影した動画をお互いに見合うことで、その可視化はさらに加速されたといいます。 隣の教科のことは知っているようで、意外と知らないもの。「あの教科はこういうことを伝えようとしていたのか」「こういう見せ方もあるんだ」といったような気付きの応酬は、動画を介したちょっとした教育研究会としての役割も果たしていたようです。教材が惹きつけるものであれば、どんな環境でも必ずできることがある「オンラインから始まる関わり合い」は大人が思うよりもスムーズに JIYUTubeの運営でオンラインへの理解が進んだ5月頃、まだまだ自粛が続きそうな状況を鑑みて、当初二の足を踏んでいたZoomを活用して、全学年オンラインホームルームを開始しました。 「実はその前から、生徒たちにLINEでいいからホームルームをやってほしいと依頼されて、グループ機能を使ってホームルームを開催していました」と言うのは高3の担任である川上史也さん(美術科)。進路を心配する声もあって、独自でZoomでの保護者会も行っていたとのこと。こうした先行事例からフィードバックを得ることができたのも、走りながら考える好例でしょう。 「うまく意思疎通できるのか?」というコミュニケーションの根本への不安は、ホームルームレベルでは杞憂でした。誰もを置き去りにすることがないよう、適切なデバイス環境が無い家庭向けには、「自由の森学園の教育を支える会」からの支援によって、貸出用のタブレットも用意されました。 「当初はどれくらい参加してもらえるのかという不安もありました。でも始めてみたら、私が担当する中学ではほぼ全員が参加してくれた。正直なところ、こんなに集まるのかと驚いたくらい」。そう語る中野中学校長は、入学式についても従来とは違った様子が見られたといいます。「例年ならそこが初対面で、みんな緊張しているのですが、今年はオンラインで顔を知っている者同士です。“ようやく会えた”という雰囲気で、とても和やかな空気でした。それぞれ心の準備もできていたようで、結果として良い効果を生んでくれたようです」。全教科の内容を一覧にして見渡した黒板。教科に授業の裁量の多くが任されている自由の森学園において、改めて学園の教育の全貌をすべての教員で見渡す貴重な機会となった。6月中頃に行われた入学式。オンラインホームルームを繰り返した後の入学式は、すでにみんなが顔なじみという、今までにはないムード。

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