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4生徒の学習権を支える 休校期間中、教職員の間では幾度となく話し合いが行われていました。その議論の根底に常にあったのは、このような事態のもとで、どのようにして子どもたちの学ぶ権利を保障していくことができるか、ということ。 「保障するべきだ」と誰かが議題に掲げた訳でもなく、一同が当然のこととして、そこをスタートラインとして考えを重ね合わせることができた——。そのことを、菅間高校教頭は「実践の真ん中に、ハートの真ん中に『子どもたちのために』という思いがある人たちの集まりなんだな、と改めて思った」と、嬉しそうに語りました。 「生徒たちも『(授業ができないことは)仕方ないよ』と言ってくれるけど、仕方ないと受け止めることが、問いを失うことにつながらないようにしたい。答えのない問いに向かって行くのが学びだから」と語ったのは、日本語科の丹羽さん。仕方ないという言葉が作り出してしまう世界に区切られてしまわずに、会うことができない生徒たちとどのように向き合うべきか考え続けたと言います。安心が学びの始まりであるように 職員会議では、新たに学園に足を踏み入れる新中1、新高1生を、特にしっかりと支えてあげたいという声があがっていました。 前所属の学校でも休業要請の混乱の中で卒業を迎え、そのまま新しい学校にも行けない事態。新しい担任やクラスメイトの顔も分からない、という状況を一歩こういう状況だからこそ、学校は「学ぶ権利」を保障していく場であるべきでも前に進めてあげたいと、まず担任が電話をかけるところから始めました。 「一人ひとり、家に電話をかけて自己紹介して。どんな生活をしているか、不安はないかなど話をしました」と話すのは、中1で担任をもつ沖山元輝さん(音楽科)。事務的なことだけ話して、はい終わり、というわけではないので、20数人のクラス全員と話すのには、数日かかったといいます。 やがて電話の取り組みは全学年に広がりました。高3で担任をもつ後藤幹さん(理科)は、「もっと愚痴や文句が出るかと思ったのですが、意外と皆ひょうひょうと受け止めていた」といいます。とはいえ、「冷静に受け止めている」というのとも少し違う、「思考を保留している、そうせざるを得ない心境なんだ」と伝えてくれた生徒もいたといいます。 進路を決める大切な時期となる高3。現状を受け止めるだけで精一杯だというその気持ちを、いかに支えられるか——。 生徒たちと久しぶりに会話を交わした教員の皆さんは、この状況の中で、生徒と、その学びのために何ができるのか、そこへ向き合う思いをさらに強くしたといいます。ようこそ自由の森へ!ようこそ新学年へ!「ウェルカムボックス」 世の中では、さまざまな分野で急激にオンラインの取り組みが進められていた4月中頃、学園では「ウェルカムボックス」と名付けた箱を全生徒に発送しました。箱には、新学期に使う教材やいくつかの課題、新入生には各教科から今後学ぶ内容についての紹介が収められていました。オンラインの取り組みも検討されましたが、まずは「リアル」で、ということでアプローチした最初の一手です。教職員総出で取り組んだ「ウェルカムボックス」。新学期の教材や各教科からの課題、図書館からの案内などを全生徒に送付した。食生活部からは、校内の桜を塩漬けにしたものも。左)高1の学年教員が集まって、オンライン授業の試行錯誤中。右)中1のオンラインホームルームに飛び入り参加する中野中学校長。

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