morinoat_30
12/16

1210宇都 洋平 さん小宮 俊海 さん 現在、遺跡内で行われる開発行為の調整や、民間の発掘調査の指導・監督、個人住宅の発掘調査などの業務に携わっています。 外部の人と接触する機会が多い仕事で、感染のきっかけになりかねないとのことで、5月いっぱいまでこれまで大勢で取り組んでいた業務を、2名で行ってきました。 当然激務を極め、心身ともにボロボロです。おかげで酒量が増え、ダイエットで落とした体重もすっかりリバウンドしちゃいました。 公私両方で感じたことですが、立場の弱い人間に当たり散らす人を良く見た気がします。具体的には、役所の職員へは「公僕」だからどんな暴言を吐いてもよい、お店の店員へは「お客様は神様」だから無理難題をいってもよい、などなど。人間の心の弱さを垣間見た気がします。世間で話題になった「自粛警察」も歪んだ正義感の表れでしょう。 また良い面では、オンラインで様々なことができることが一般社会で何となく お寺での毎朝のお勤め、境内の掃除、お参りの方の応対といった基本的な生活は、今までと変わらず過ごしていました。しかしお参りの方は激減、法事なども控えて頂いていましたし、ほかのお寺などでの集いは延期や中止。本山の会議や研究会だけは、リモートで行っていました。 少し時間ができたので、今まで無縁だったジョギングやヨガといった運動を始めてみたのですが、体重は今のところまったく変化しません……。 非常事態宣言発令時、テレビに誰もいない新宿や渋谷の駅前が映し出されるのを見て、東日本大震災の頃を想起していました。あれから10年近くが経過した今、あの時以降に創出されてきたはずの「新たな価値」では、巷はこのコロナ禍の混乱を避けられなかったようです。 今、社会や人間関係の形は変容を余儀なくされていますが、この最近の状況は、私自身について考える良いきっかけにもなりました。現実として自身の「死」を意識しましたし、同時に「生」について考える機会も増えました。その中で、社会をあまり意識しないかたちで、自身と向き合うことができたのです。浸透したことではないでしょうか。仕事の面もそうですが、オンライン飲み会は大変興味深かったです。私自身はまだやっていないのですが、妻が自由の森時代の同級生たちとやっているのを見て、とても羨ましかったです。 今回のCOVID-19騒動で改めて感じたのは、それまでの当たり前が何かのきっかけで、当たり前ではなくなるということです。今までの平凡な日常生活がいかに幸せなことであったか実感しました。なので、今は仕事もプライベートも後悔をしないよう、全力で取り組んでいます。 近頃、友人とスケートボードを始めたり、船釣りにでかけたりと今まで経験してこなかったことにチャレンジしています。みんなで一緒に楽しめるけれど、3密にならないことを探すのも意外と楽しいものですよ。 この騒動は歴史的な厄災であるのは間違いありませんが、その中で少しでも前向きになれるよう行動するのも必要だと考えます。 まず立ち返ったのは、「今までしてきた事」。それにもとづいてやれる事なんて限られており、ちっぽけな自分を痛感します。でも「それ以上でもそれ以下でもないな」と思うと、やりたい事が少し見えてきたように思います。 若い頃から鎌倉時代の『明恵上人』というお坊さんを敬愛しているのですが、その方の作品に『四座講式』という、仏教を開いたお釈迦さまを慕って創った、永い唄のようなものがあります。今風にいうとオペラですね。 今後、仲間を募って、しかるべき先生に指南を仰いで、この作品を深く勉強したいと思っています。そして理解を深めた上で、唱えられるようになりたい——。 そう考えています。「当たり前」を楽しんでいく今までしてきた事を通して自身と向き合うUtsu YoheiKomiya Shunkai11期生藤沢市 学芸員神奈川14期生真言宗智山派東覚寺 副住職大正大学 非常勤講師智山伝法院 非常勤講師東京

元のページ  ../index.html#12

このブックを見る