morinoat_30
10/16

1010川尻 麦 さん川尻 麻美夏 さん 新宿にある「プーク人形劇場」の入口で、カフェを営んでいます。通常、公演がある週末は観劇に来た方が多く訪れますが、ふだんは、近所の会社で働いている方が中心です。 劇場は休館が続いていますが、うちの店は、粛々と営業していました。それでも持て余す時間があったのでよく散歩していたのですが、知らなかった農家の直売所や、真面目にやっているパン屋とか肉屋とか、ちっさい良店に出会えて楽しかったですよ。こんな事でもなかったら、一生気付かなかったかも。 うちの店はというと、近所にお勤めの人たちはあまり来なくなってしまっていたけど、新しい顔をよく見かけるようになりました。お昼は、平時だとふだんは見かけない近所に住んでいる方が多くいらっしゃって、まるでご近所さんが集う、田舎町の小さな喫茶店になったみたいでした。すぐ近くのスタバが長く閉まって 2月頃から上演のキャンセルが出始め、4月から6月はまったく舞台に立てず。休業して自宅待機していました。7月現在、劇団からの給料(プークは会社組織です)は続いていますが、今後の状況は心配です。 自粛期間は、ほぼ毎日、家族で近所にある公園でピクニックをしていました。よく言われることですが、楽しいことって身近にあるもんなんですね。有名な公園じゃなくても、カフェのサンドイッチじゃなくても、外でみんなで食べると美味しい。話すことなんて意外といくらでもある。しかしながらこの話を広げると、人々が「身近な」楽しみで充足するとしたら、「舞台など観に来なくなるのではないか」という心配につながるので難しいところです。 舞台は中止を余儀なくされましたが、映像は細心の注意を払いながらいくつか収録していました。そのひとつは、NHKの「おげんさんと(ほぼ)いっしょ」。出演者の皆さんは、先に行われる音声収録のみの参加だったので会うことはありまいたので、スタバ派の人たちもおそるおそるいらっしゃいましたよ。 外国の方は、グッと見かけなくなりましたね。旅行者はもちろんいませんが、近所の方も、外出することに人一倍慎重になっているようでした。 感染の拡大が激しい国で、外国人が差別を受けている様子をメディアで見聞きすることがありましたが、そういうことに対する自衛的な心理が働いているのかな、と思っていたのですが、本当のところがどうなのかは分かりません。 人がぼちぼち街に出てくるようになった最近。「正直いって、今くらいの感じがちょうどいい。以前の働き方には戻りたくない」という声が聞こえてきます。 このコロナが招いた緊急事態は、平時に見えなかったいろいろなものを、立ち止まって考えるきっかけになっているように思います。せんでしたが、星野源さんとひそかに自由の森卒業生の共演でしたね。 出演者とシンクロして人形が喋るというスタイルの作品の中では、「人形だからこそ (出演者が顔出ししないからこそ) 心のうちを晒しやすい」という人形の力を感じることがあります。私は出演していませんが「ねほりんぱほりん」などもその筆頭かと思います。 「おげんさん」では出演者である藤井隆さんが、わざと人形にできなそうな動きを音声収録中に行い、「これ、絶対再現してよね!」と人形を挑発するシーンが何度かありました。このような人形と俳優が共に番組を盛り立てていく試みは初めてだったので、興奮しましたね。 7月末に公演を再開しました。8月9日~11日にも、ヨシタケシンスケさん原作の「りんごかもしれない」の公演を予定しています。この、「もりのあと」が出てすぐ後ですが、もしご都合がつく方がいらっしゃったら、ぜひお越しください。「普段とばしちゃっているトコ」に目を留める身近な喜びの中で相反する想いKawajiri MugiKawajiri Mamika6期生カフェ「コーヒープンクト」 店主東京 4期生人形劇団プーク 人形劇俳優東京

元のページ  ../index.html#10

このブックを見る