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7韓国でのフリーハグ、あなたはできますか? 「私は韓国人です。一緒にハグしませんか?」 そんなプラカードを手に東京・渋谷でフリーハグを呼びかける女性の映像からある日の授業は始まりました。彼女が身にまとっているのは、紅白のチマチョゴリ。一目で韓国人とわかります。このプラカードを持って北海道から沖縄まで全国15都市をまわり、ハグをした人は2,000人を超えたといいます。「がんばって」「すごく勇気がある」などの励ましとともに、「日本に来ないで」「偽善」といったネットでの心ない言葉も紹介されました。次の動画では韓国・ソウルでフリーハグ活動をする日本人男性の姿が。安倍政権反対デモが行われている広場の脇で、アイマスクをして腕を広げました。さまざまなつながりを通して、互いの課題を考える関係を築いていくないこと。言葉や国境を超えて人と仲良くなれる。そんな実感を持つことが目的だと藤原さんは語ります。「ホームステイというかたちをとるのも、韓国の家庭でもてなしを受けることで感じるものがたくさんあるから。韓国の生徒も同じです。だからといって受け入れ先の家庭に高い要求をしているわけではありませんよ。お願いしているのは寝るところと食べるものを用意してくださいということだけです。 今、グローバル化が大事だとあちこちでいわれますが、まずはお隣の国と仲良くできないと。朝鮮半島の植民地化や慰安婦問題など、自分たちの負の歴史をきちんと認めて新しい世界をつくっていくべきではないでしょうか。政治を超えて、民間レベルでは日韓の交流はすでに密なものになっています。産業はもちろん、骨髄バンクなども提携が始まっているようです。しかも少子高齢化など直面している社会問題も共通するものが多い。高校生や教員などいろいろなレベルでつながりながら、お互いの課題を一緒に考えていける関係を構築していけたらと考えているんです」。東アジアの問題を自分ごととして考えていく 韓国の高校生たちと話し合うフォーラムのテーマを見ても、北朝鮮のミサイル問題、南北統一、従軍慰安婦、LGBTなど、両国に関係するホットな話題ばかり。2019年に開催されたフォーラムのテーマは「日韓の関係悪化にどう向き合うのか?」でした。 筆者が韓国講座を見学した当日も、フリーハグの映像をきっかけに、グループで関係改善へのアイデアを出す話しあいが行われていました。 「みんな、これ見てどう思う?」「日韓関係にいい効果があると期待できる?」韓国講座の担当教員、藤原さんが問いかけます。 「すごい」 「自分がその場にいたら、絶対ハグすると思う」 「政治は変わらないかもしれないけど、身近なところから対韓感情が変わっていく気がする」 ポツリポツリと感想を述べる生徒たちに、藤原さんは「ちょっと大胆なこといいますよ」と前置きして提案しました。 「この講座の受講生を韓国に派遣して、現地でフリーハグをやろうといったら、どうしますか?」。グローバル化の実現はまず隣国との関係から この韓国講座は、夏に約10日間、韓国の河南高校とサンマウル高校を訪れるスタディツアーが学びのハイライトになります。現地では各校の生徒の家にホームステイして互いの文化にふれながら、それぞれの学校でプレゼンテーションやフォーラム(公開討論会)などを実施します。冬にはサンマウル高校の生徒たちが来日。フィールドワークや学園の授業に参加してもらい、パーティーなどでもてなします。 授業は林業や和太鼓など言葉が障壁になりづらい科目を中心に、サンマウル高校の生徒に教壇に立ってもらい、韓国の文化を伝える時間も設けています。交流を深めるため、4月から日韓の歴史や現状を学びながら準備を進めていきます。 この講座のポイントは、語学研修では日本でフリーハグを呼びかける韓国の女性、韓国で呼びかける日本の男性。それぞれの思いを語る報道番組の映像を教材に、一人ひとりが、この2つの国の問題について考えながら授業は進む。

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