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1010 今では植民地時代を知る方も少なくなりました。貴重なお話をうかがったという感慨とともに、このエピソードは印象深く心に残っています」。自分たちと違うからこそ出会いは楽しい こうした体験をベースに、生徒たちは視野を広げ、国境を超えてつながる体験に自信を深めていきます。韓国講座の受講をきっかけに自分のテーマを見つけて大学入試に挑み、合格を勝ちとる3年生も少なくありません。ある生徒は在校生全員が循環型農業を体験するサンマウル高校への驚きからオルタナティブスクールに興味を持ち、現在は大学で教育学を専攻しています。 サンマウル高校の生徒は「自由の森と交流しながら、違うということは決してつらいことではないことがわかりました。むしろ、相手のことをもっと考えるようになり、理解しようと努力するようになりました」と自身の変化を挙げ、「僕と違う人に出会って、その人々と時間を過ごすこと、そしてこのすべてのことが楽しかったし、幸せでした。僕はこれだけでも自由の森との交流が大きな意義を持つと考えています」と語っています。 2017年に行われたサンマウル高校との交流10周年記念のイベントには卒業生からもたくさんの感謝の声が届きまし自分と違いがある人と出会い、過ごす、豊かな時間から考えることた。その中からいくつか抜粋してご紹介します。 「韓国講座では国や社会、生活習慣が異なっても自分たちと同じように暮らす若者がいることを等身大の実感として得られました。国や宗教観の摩擦が各地で生じている世界にあって、このように生身の人間同士が交流し、互いを知りあい、一人の人間として認めあえることは、とても重要なことと思います」(吉沢信介さん) 「自分の国ではない、他の国のそれも同世代の人と出会えたことでいままで自分の中にあった境界線みたいなものがなくなった。交流したことで自分たちと同じなんだという感覚が芽生えました。私たちと同じように若者の感覚だったり感情を持っているという、当たり前のことです。当たり前のことを実感したということです。だからといって以前の私が他国の人に対して差別的なことを感じていたわけではないのですが、やっぱり実際にコミュニケーションをとることはどんな体験よりも大事なことだと思います」(涌井ひかるさん) 「『国』ではなく『人』として関わりを持ち、絆を深めることの大切さと異国を知ることの楽しさを学んだ。正直、初めて韓国に行くまでは偏見だけでなんとなく韓国は好きではなかったけど、関わるほど好きになっていった。この経験があったからこそ、今の仕事でかなり活かせていて、確実に生きる術の一部になっている」(田島京佳さん)韓国でのフリーハグは……「超できる!」 さて、最後に冒頭の授業に話を戻しましょう。「韓国でフリーハグをやろうといったらどうする?」藤原さんの問いに対して出てきた答えとは——。 「やるよ!」 「超やりたい!」 という屈託のないものでした。「本当に実現するかはともかく、実際に韓国を見てきた生徒たちが相手に対する信頼や安心感を醸成してきたからこそ出てきた言葉。それがこの講座の成果のひとつなんです」。藤原さんが笑顔で胸を張りました。 この号が発刊する1月には、サンマウル高校の生徒たちが来日する予定です。さて、私たちの社会は、温かな想いを彼らに持ってもらうことができたのでしょうか。サンマウル高校での「チマチョゴリと浴衣の交換会」。両国の伝統的な衣装に腕を通す中で、たがいの国の豊かな文化に触れ合う時間。

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