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55 マッサージをしたり手づくりのご飯を食べさせてあげたりと、「衰えてきたワンちゃんにしてあげられることがある」ということは、多くの飼い主さんにとって喜ばしいことです。薬を飲ませて見守るだけだと、どうしても看病をしているような気持ちになってしまう。でも元気になるためにしてあげられることがたくさんある、しかも目に見えて健やかになっていくのですから、前向きに取り組んでいけますよね。これも東洋医学で治療することの良いところだと思います。 昨年、本を出版しました。この本はマインちゃんの飼い主さんが、東洋医学による動物のケアについて、もっと多くの人に知ってもらいたいと出版社にかけあってくださって、世に出せることになったものです。「うちのワンちゃんはもう高齢だから」とあきらめていた人が、少しでも長く共に幸せな時間を過ごせるように、その一助になることができればと願っています。バランスを整えることを大事にして治療を進めます。もちろん、すべての病気を治せるわけではありませんが、これまであきらめていた症状が緩和して、元気を取り戻せる場合があります。 例えば、末期がんで苦しんでいたワンちゃんの症状がお灸で楽になって、穏やかな表情を取り戻せると飼い主さんも嬉しいですよね。長患いしないで済むことも多く、亡くなる前日まで普段通りに外をお散歩していた、ということも珍しくありません。元気なペットと一緒に過ごせる時間が長くなる 今日、治療したのはダックスフントのマインちゃん。3年前に初めて診た時は、あまり良い状態ではありませんでした。でも2週に1回、お灸と鍼の治療をして、タンパク質をしっかり摂る手づくりの食事に切り替えてもらうことで、徐々に元気を取り戻して走れるまでになりました。 体内に炎症が起きていることを示すCRP(C−リアクディブ・プロテイン)や、その他の数値が高い時もありましたが、現在は異常値はありません。白髪もほとんどないですし、毛のツヤも良くて見た目にも健やかになりました。現在18歳で、人間の年齢でいうと80代の後半くらい。目は見えにくくなっていますが、自分の力で散歩することもできています。簡単にできるケアを多くの方に こういう良い状況をつくるためには、治療だけではなく、飼い主さんの日頃のセルフケアも大事なんです。私は往診の時に、治療を施す他に飼い主さんができるマッサージや棒灸の使い方、食養などもアドバイスしています。「してあげられることがある」ということは、喜ばしいこと往診セットの中身を拝見。鍼は3種類入っていて、いずれも人に使用するものよりも細い。お灸に使うもぐさや灸点紙、軟膏、圧鍼器なども。初の著書『愛犬と20年いっしょに暮らせる本』では、マッサージやお灸など自宅でできるケアや、愛犬のための薬膳レシピなども紹介している。星野 浩子 さん〈7期生〉1975年埼玉県生まれ。自由の森学園高等学校卒業後、酪農学園大学に進学。獣医師の資格を取得する。動物園、動物病院勤務を経て、2012年から日本獣医中医薬学院で鍼灸・漢方などの伝統的東洋医学の治療・施術を学んだのち、2016年に東京都調布市で往診専門の「ほしのどうぶつクリニック」をオープン。獣医師、特級獣医中医師、獣医推拿整体師。著書に『愛犬と20年いっしょに暮らせる本』(さくら舎)がある。

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