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55に、実際に受け入れた人たちの思いや考えを伝えてみよう、という思いの中で制作が決まったものです。 「さあ、移住者と関わろうよ!」って、ダイレクトに言ってもそれはなかなか難しいかもしれません。でもこのフリーペーパーを見て、空き家を抱えるオーナーさんが「なんかイイじゃん」「空き家を人に貸すのもいいかもな」っていう気分になってくれたらいいなって。そういうことが、町のカタチをちょっとずつ変えていくことのキッカケになっていけばと思っています。 人は多くの関わり合いの中で、言葉を介して交わっています。でも、言葉は想いをすべて伝えられるものではないから、こぼれてしまうものもあるんです。そういう「言葉に乗り切らなかったもの」も、僕は大切にしていきたいと思っているんですよね。「社会」と「私」の振り子に揺られながら 社会課題を専門に扱う仕事に関わるようになったのは、前職である企業のCSR※を専門とする制作会社に勤めていた頃からです。もう12年くらい経ちました。その前は郵便局員をやっていたのですが、もう少し遠いレンジの社会課題を「自分ごと化」して貢献したいという気持ちが大きくなり、勤めた会社でした。 社会との関わり方、距離感みたいなものは、僕の中で常に振り子の様に揺れているような感じがあります。社会との間合いって人それぞれだし、時間が経てば変わりもする。自分も「もっと社会に関わりたい!」とグイグイ行っちゃう時もあれば、疲れちゃってひとりでジッとしている時もありますね。なんだか楽しいも大切 ファシリテーションを介した場づくりは、一人ひとりの思いを大切にする、自由の森学園での生活に共通するところがありますね。でも、こんな話し合いの場で仕事をしていながら、僕は話し合いだけがすべてを決める唯一の手段だとは思っていないところもあります。 たとえば自由の森では、ホームルームで「クラス旅行行こうぜ」って盛り上がったのが、「なんで、そもそもクラスで旅行に行くんだ」みたいなところから話し合いになるケースがあります。それで順調にいけばいいけど、変に話し合いがこじれて、みんなで疲れて頓挫しちゃうこともある。そういうのは、チョットもったいないなぁと思っていたのです。「楽しそう!」とか「いいねぇ!」っていう思いとか勢いみたいなものを他のアプローチでうまく伝えられないかな、と。なんとなくクラス旅行に興味ないだけの人もいる。彼らは別に「クラス旅行断固反対!」な訳ではないから、提案の仕方次第のところがあるんです。 今思えば、クリエイティブを介して何かを伝えるということは、そんな「他のアプローチ」のひとつだと思うんです。先ほど紹介した「小川そだち×小川ぐらし」のフリーペーパーも、移住者を受け入れることに不安のある居住者の方達「なんかイイじゃん」「空き家を人に貸すのもいいかもな」っていう気分になってくれたらいいなって「六本木アートナイト2018」にて、アーティスト兼ファシリテーターとしてワークショップを開催した際の1枚。「アート作品を廃れない言葉にして残したい」という依頼を受けた企画。谷口西欧 さん〈8期生〉1976年バルセロナ生まれ。自由の森学園高等学校を卒業後、京都精華大学人文学部入学。卒業後、雑貨店店長、郵便局員、環境系広告制作会社を経て、現在、ファシリテーターやコーディネーター、プロデューサーなど、さまざな立場での仕事をするかたわら、埼玉県小川町にて地域コーディネーター、プロデューサーとしても活動中。同時に、企業の街づくり事業、工芸ブランドの商品開発事業にも携わる。「ワイルド番地」名義で音楽活動も行う。※CSR(corporate social responsibility)企業の社会的責任。企業が社会の中で利益の追求のみを目的とせず、事業活動を通じて責任を果たし、社会の持続可能な発展を支える活動。

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