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6観光地。“勝浦にもそういうものをもっと作らなきゃ人が集まらない”という人もいますが、私は分かりやすくない観光地で構わないと思っています。気づいたら面白いことはたくさんある。何かを提供してくれるのを待っている人にはつまらないかもしれないけど、楽しみを発掘できるタイプの人にとっては魅力的な場所ですよ」。 楽しみを発掘できる人こそが楽しめる町。縁もゆかりもないこの地にやってきた2人が、まさにそれを体現しているのではないでしょうか。今の雰囲気を大切に 最近、近所に空き家が出たので、そこを譲り受けてキャパシティを増やすかどうか考えているとのこと。洋治さんは、いずれにしろ基本的なスタンスは変えずゆったりとやっていきたいといいます。「少人数の良さってありますよね。私たち2人と、たまにアルバイトさんに手伝ってもらう規模でゲストハウスをやっていて、そんな感じの場所に来てくれる今のお客様たちの雰囲気も自分たちにとって心地いい。やたらと拡大しちゃうと、すでに大変なのに、さらに仕事に追われてしまう。そうすると、私たちが楽しめなくなっちゃうので。今、生活していける程度の対価はいただけているので、今の雰囲気を大切にしながら、充実した宿にしていきたいですね」。 この6月で5年目に入るお茶の間ゲストハウス。訪れる人々との関わり合いの中で、穏やかな場が育まれてきたこの宿には、ここでしか味わうことのできない、ゆったりとした時間が流れています。分かりやすくない観光地「思ったより大変でした」。 今思うことを2人に聞くと、出てくる答えは同じでした。そんな忙しいなかでも、春奈さんはお客様のことを考えてレストランや調理委託会社に勤めた経験を活かし、食事の提供を始めたそうです。「大半のゲストハウスは素泊まりですが、うちはご飯も出すことにしたんです。最初はそのつもりはなかったのですが、徒歩圏内に食事のできるところが少なくて。しかも閉まるのも早い。本来おいしい野菜と魚がたくさんあるのに、お客様たちがそこにありつけないことが多かったようです。そこで、じゃあうちで出そうかね、ということになったんです」。 勝浦市は、首都圏で唯一人口が2万人を切っている市です。他の同じ規模の町と同様、高齢化も激しく、お店の数もさほど多くありません。しかし、過疎化の進んだ地域であると切り取ってしまえば、ネガティブなイメージばかりが先行しますが、洋治さんはそればかりではないと語ります。「房総半島を訪れる観光客数は減っているようですが、東京駅から特急で約90分とそれほど遠くもなく、海と山が近く魅力的な自然環境もいっぱいある。そんなに悪くないですよ。好きな人はハマる地域なんです」。 春奈さんも、それに同感のようです。「夏は海水浴のお客様が多いですが、それ以外の季節は、まあまあです。分かりやすい観光地ではないから、大多数の人にはあまり気づかれていないって感じですね。あそこに行くとアレができて、ここではアレを楽しめる、みたいなのがあるじゃないですか。それが、分かりやすい満面の笑みで手を振る洋治さんお茶の間ゲストハウス

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