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渡邉 さやか(自由の森学園 食生活部)❹ 春のロールキャベツ 春がぎゅっとしき詰められたお鍋。 黄緑色したキャベツも、それに包まれている新玉ねぎも、春からの贈り物。春キャベツで作るロールキャベツがメニューに出たら、それは食堂に春が訪れたしるしです。食堂では旬の野菜が使われています。一番おいしく食べられる時期に、生産者さんから届けられ、そのままサラダになったり、煮たり、焼いたり、蒸したりしながら、朝昼晩とたくさんの方へと季節の味が届けられているのです。 それぞれの季節に、食べるのを心待ちにしている食材がありますが、春キャベツもそのひとつです。春先に収穫されるキャベツは春玉と呼ばれていて、玉のしまりは緩いのですが、玉内の葉まで緑色を帯びていて、みずみずしくてとってもおいしいです。むかしは、青臭いだなんていわれて嫌われ者だったようですが、近頃は葉が柔らかくておいしいと、越冬して甘みが強く玉の詰まった寒玉のキャベツより、消費が急増しているのだそう。同じ食材でも、収穫される季節によって、味や匂いに加え、食感も違うのですから、色々な味を味わうことは、味覚の変化に繋がることなのだと感じます。 嫌われ者といえば、野菜は苦手……。と話してくれる生徒がたくさんいます。ですが、食べものをおいしいと思う感覚は、思わぬ瞬間に開かれるのだから不思議だなって思うのです。ずっと苦手だと思っていた食べものが大好物になったり、何がきっかけかはわからないけれど、知らぬ間に味覚が広がっていく訳ですから、とりあえず食べてみるものですよね。今日この瞬間の食事が、お爺ちゃん・お婆ちゃんになっても残っていくような味になるかもしれないのだと思うと、日々の「ごはんを食べる」ということが、とてもとても深いことなのだと感じられます。10代の頃、嫌いだった山菜の苦みもキャベツの青臭さも、人参の甘みだって、20歳になる頃には「おいしさ」に変わっているかもしれません。在校生には、たくさんの味や食べ方に触れ、自分の味覚を育てていく場として、食堂を上手く利用してほしいな、と思っています。「まっとう」なごはんが食べられる場所が身近にあると、なかなか気づけないもの。化学肥料を使用せず、農薬もできるだけ使用せずに育てられた旬の野菜を使い、なにより毎日手づくりされた食事が食べられる。今なら、自由の森学園の食堂のごはんが「日本で一番まっとうな学食」なんだってことが分かる気がします。 それが、卒業してから感じる「味の違い」なのかな。当たり前って当たり前じゃないのだなあ、と感じる日々なのでした。14

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