morinoat_019
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ザインを提案する向きもあるかもしれませんが、僕はそういう感じではないかな、と思って。なぜなら、教室は生活の場だからです。この学校では、なおさら教室はただの「勉強をする場所」ではないはず。そういう生活の中で空間そのものが目立つ必要はないと考えました。あたかも風景として存在するような、そんな教室を創りたかったんです。岩田:天井やドア、ロッカーなどに杉の無垢材がふんだんに使われました。この学校は、開校当時かなりドタバタした中で建てたようなところがあって、こんな自然の中に建てたわりに、風を感じたり木のぬくもりにふれたりといった事に対する配慮が不足していました。それが今回のリニューアルで大きく変わるなあと思っています。ぬくもりを感じ生活に溶け込む空間を岩田:1985年の開校以来、トイレや外壁を除けば、校舎の大きな修繕をしたことがありませんでした。しかし、築33年目を迎えてあちこちで老朽化が目立ちはじめ、まず一番大事な普通教室について、本格的なリフォームを行うことになりました。そして何名かの専門家の方にお話を伺った結果、日高さんに設計をお願いすることになりました。日高さんが大切にした点を教えてもらえますか?日高:まずは必要な機能を取り戻すことを優先順位のトップに据えました。開けたり閉めたりするのに踏ん張って力を入れていた古いドアを改善し、中身が丸見えだったロッカーにはすべて扉を取り付けるという、基本的なことです。デザインもとくに奇をてらった点はありません。「自由の森学園だから」と、個性的なデ日高:僕自身、飯能の材木屋さんと縁があったこともあり、地場の木材を使うことができました。また極力、木と木を組み合わせてつくる伝統工法を採用しました。下地が鉄筋コンクリートなので、すべてに適用することはできなかったのですが、学びながら木に包まれる気持ちよさを感じてもらえればいいですね。教室は生徒たちの生活の場。空間が目立つ必要はない。風景として存在するような場を創りたかった。http://www.kirakunat.com一級建築士。設計事務所「きらくなたてものや」主宰。京都大学工学部建築学科卒業後、まちづくりやコーポラティブハウスの企画・設計会社を経て、2004年に「きらくなたてものや」設立。木、土など身近な自然素材を使い、職人たちのものづくりが光り、住む人も楽しく関われる家づくりをめざしている。日高 保 さん8放射線状に貼りこんだ無垢材が、空間に豊かな広がりを感じさせる天井部。照明は教室と平行に配置することで、デザインが過剰に主張しない空間を作り上げている。

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