morinoat_019
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5べてはいけないとか、そういうものです。でも、お釈迦様もお肉を食べたという説もあるし、鎌倉時代にも結婚していたお坊さんがいました。多くの場合、伝承と実態には差異があります。やはり私はこういう所が気になってしまいます。 「こういう決まりがあるから」「昔からそうだったから」という批判は、往々にして根拠が薄弱なことが多い。インターネットの炎上のようなもので、あまり気にすることではないと思っています。決して伝承されてきたものを否定するものではありません。そんな批判に囚われるよりも、史実や先人の綴ったテキストを紐解いて学ぶことの方が尊い行為だと思うんです。 それはお坊さんの世界に限ったことではありません。人の間にある争いごと、戦争の引き金になることにも結びついていくことではないでしょうか。それを理解しないで形だけマネても意味がない。そして、なんといってもつまらないですよね。「いいことだから古くからある。では、それはどこがいいんだろう?」と自分で考えることが大切なのだろうと思っています。「寺の息子」だからだけではなく仏教学にのめりこむ 高校卒業後は大正大学の仏教学科に進学しました。本音はサークルに入って飲み会して…… みたいな、モテそうな「大学生」を1回やってみたかったのですが、入学したらそういう波に乗り遅れて、あっという間にすっかり寡黙な大学生に。でも仏教の学びを進める中で、親戚もみんなお坊さんで、実家も寺だったわりに、自分は本当になにも知らないなあって思い始め、学問の方に夢中になり始めてしまいました。「寺の息子だからお坊さんになるために」ではなく、「仏教ってなんだろう?」ということを純粋に知りたくなった。そこからは仏教を学問としても志しています。 高校時代は、際立って積極的に授業に取り組むタイプではなかったと思いますが、大学では最前列で聞き漏らしてたまるか、と授業を受けていました。こういう卒業後にやけに真面目になっちゃうのって、「自由の森あるある」らしいですね。史実や先人に学ぶ たまに「お坊さんはあれしちゃいけない、これしちゃいけない」ということに固執する方がいます。結婚しちゃいけない、お酒を飲んではいけない、お肉を食亀戸七福神の弁財天を祀っている東覺寺。小宮さんに、御朱印をいただきました。ほかにも、弘法大師ゆかりのお寺巡り「御府内八十八ヶ所霊場」の札所でもあります。5小宮俊海さんが研究活動の一環で共同執筆した著書『明恵上人(みょうえしょうにん)夢記 訳注』(勉誠出版)。小宮 俊海さん〈14期生〉/1982年大阪府生まれ。自由の森学園高等学校卒業後、大正大学人間学部仏教学科入学。在学中、智山専修学院での僧堂生活を経たのち、同大学院仏教学研究科を満期学位取得退学。現在、東覺寺副住職に就くと共に、大正大学綜合佛教研究所研究員ならびに、智山伝法院宗学研究室に所属。僧侶と研究員、二つの顔を持つ。

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