自然で安全な食事を食べて、子どもたちに大きくなってほしい。 そんな想いで、自由の森学園の開校当初から食堂に野菜・大豆・卵を提供しているという埼玉県小川町の金子農園。 日本にまだ有機農業の意識があまり浸透していなかった1971年から38年間、ずっと化学肥料・農薬を一切使わない有機農業に取り組んできたパイオニアだ。
農園に足を踏み入れるとなんだかいいにおいがした。 土のにおい、野菜のにおい、かすかに食べ物のにおいもする。 天ぷらの残りかすを再利用して、農業用運搬車のエネルギーとして使っていると聞いて納得した。 ここでは火を焚く時も、肥料を発酵したものをガスとして使っているという。 農園を歩き回っていると麦の列の隣にきゅうり、その隣にキャベツが植えられていたりと、色々な種類の農作物が散りばめられるように栽培されているのに気付く。 これは自然のしくみに従って多様な植物を混在させて植えることで土が丈夫になるようにするためだ。 なるほど、色々なものが共存し合ってバランスを保っているのは、野菜の世界でもとても自然なことなんだ。
「農業で一番大切なのは土づくり。」と金子さんはきっぱりと言い切る。 小動物、微生物がちゃんと充満していて、お日さまの光をいっぱい浴びたふかふかの土から、いのちが生まれてくる。 食物連鎖のバランスのいい土は枯れることはない。にわとりや鴨や牛もしっかり土に足をつけて、歩いたり走り回ったり、とても元気そう。 ちゃんと自然のものを食べて育っているから落ち着いていて、家畜特有の臭さはない。 生き物は食べるものと環境によってこんなに変わるものなのだ。でも実はこれが本来の農家の姿なのだろうと感じた。
化学肥料・農薬を一切使わずに自然の力でつくり上げた有機農園は、もちろん環境を守ることにも通じる。 金子農園の周りの集落は、36年かかってようやく全て有機農園の環境にしたのだという。 それを聞いてこの農園に入って感じたいいにおい、空気のおいしさの秘密が分かった。 農園の周りの森の色もとてもきれいな緑色をしていて、森の木々はまるでのびのびと深呼吸しているようだった。
以前この農園で研修生をしていた元セールスマンの青年は、顔と手以外全身アトピー体質だった。 車のハンドル片手に、コンビニのおにぎりを食べているような食生活をしていた。 ひどいアトピー体質が、金子農園に来てからたった2週間で治った。 彼は有機農業のすばらしさに目覚め、今では長野県佐久で有機農業を夫婦で営んでいるという。
コンビニの食品やファーストフードに脅かされている現代の子供の食生活。 土から離れてまともなものを食べてないから人間社会は病んでしまう、ひどい食べ物が人間をおかしくしてる、と心配する金子さん。 「食べ物はただお腹を満たすだけでなく、体をつくり、いのちを守るためのもの。 季節の旬のものをおいしく食べて、土から生まれてきたということをかみしめていただいてほしい。 大人になっても、食べるという人間にとって当たり前のことを大切に考えてほしい。」そんな願いが、自森食堂の食材に込められている。