
この学園の創立に関わった者として、一言ご挨拶申し上げます。かつて数学者である故遠山啓は、「子どもたち一人ひとりの尊厳を大切にすること」の重要性を説きました。子どもが一人の人間として尊重されないような状況が、残念ながら既存の学校教育の場に満ち満ちていたからです。 「子どもたち一人ひとりの尊厳を大切にする」ことを学校という場で現実のものにするためにはどのような理念が必要なのかと、われわれ創立を志した者たちは考えました。行き着いたのは、「競争原理の中で子どもを育てない」という「水源」であり、それが「始まり」にもなりました。自由の森学園はその理念を掲げ続けることによって、開校に「たどりついた」場なのです。現実の社会では、競争は避けられないものだと考えられがちです。しかし、「競争原理によらない教育」を語りかけることによって、「競争原理を超えた社会」を実現するための人間を育てていくことこそ、私たちの願いなのです。 四半世紀前にこの自由の森学園という場ができました。人間が人間らしく育つとはどういうことかを、みなさんと一緒に考え続けていきたいと思っています。自由の森学園はそうした子どもたちの「育ちの場」です。一度学園にお越しいただき、できれば子どもと一緒にその場を過ごしてみませんか。 心から、お待ちしております。

自由の森学園は必ずしも「自由な」学校ではありません。込められた意味を正確に言うならば、「自由への森」「自由を獲得するための森」「自由への意志を育てる森」と言えます。単に、学校が変わって、束縛から解放されたことだけでは自由にはなれないのです。私たちを縛り付けているものは、校則やテストだけではありません。自分でも気付かない囚われ、先入観や偏見から自由になることは本質的であり、とても大事なことです。高校で学ぶということは、学問や芸術との出会いによって精神的な自由、心の自由を獲得していくという営みなのだと僕は考えています。そして、今、世界で幅を利かせている「自由」は力の強いものにとっての「自由」であって、多くの人々の「自由」ではないということです。競争に勝ち残れる勝者だけの自由が本当の自由ではありません。僕には国や企業の国際的な競争に学校や教師、保護者までもが飲み込まれているように見えます。自由の森学園は、自由であろうとする、自由を獲得しようとするみんなの森でありたいと思います。

学校という場所では、さまざまな人や多くの出来事に、偶然的に出会います。日常生活の中で、目の前に現れていることにびっくりしたり、そのことが「いったいどうなっているんだろう?」という疑問に置き換わって、もっと知りたくなっていく。
大人たちが用意したものを順序よく正しく修得しさえすればよいということはありません。図らずも自分自身の持ってしまった「疑問」が、用意された正しさとうまくかみ合わない場合が多いのです。必要なものは、時間です。中学校という ちょっと大人になりはじめていく場所で、子どもたちのもつ疑問や思考に そこにいる多くの人たち ------教師も生徒も保護者も------ が一緒に寄り添う時間をつくることで、みんながそれぞれ大きくなっていく。そんな学校を目指しています。