自由の森学園中学校・高等学校 学校案内2018
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 自由の森学園では「目を描く」という美術の課題があります。目というのは面白いもので、描いていると未知の内面が表れます。高校3年次には選択講座の「絵画 自分を描く」を受講して、私という存在に光を当てることに夢中になりました。民族舞踊部の部長をやりながら、昼休みや放課後にわずかでも時間があれば美術室にこもって自画像を描きました。当時は「私ってなんだろう?」「私と誰かの境界とは?」と答えのない問いをくりかえしていて、自分が自分であるために絵を描いていたように思います。とにかく卒業後も絵を描き続けたくて、武蔵野美術大学の油絵学科へ進みました。 自由の森には中学1年のときに転入しています。地元の中学の「考えないでこなせ」という空気になじめず、立ち止まって考える時間を求めてのことでした。実際に入学すると、考える時間どころか、絵は描きたいし民族舞踊もやりたいし、行事や校内誌の編集にも携わっていたから身体が2つほしいと思うほど忙しくなりました。 ここは、興味のおもむくままに活動できる場所。なにをしたいかわからない人でも「なにかしたい」という気持ちさえあれば、きっとその「なにか」が見つかる場所だと思います。私も美大生の自分なんて想像もしていませんでしたよ。「一人ひとりの〈生き方としての進路〉」にて、2人のインタビューのロングバージョンを掲載しています。Sora YamamotoYumi Ishii 高校時代は農作業ばかりしていました。学校から休耕地を借り、無農薬・無肥料の自然農法に挑戦しました。食の安全や自給自足、環境問題に関心があり、「自分で作って、自分で食べる」を実践したかったからです。1年目はがむしゃらに20種もの種をまいたものの、ほとんどなにも収穫できず、2年目に稲わらを敷くなどの雑草対策をしてようやくキュウリやトマト、トウモロコシ、ジャガイモなどが収穫できました。肥料も農薬も使わないと野菜本来の味が出るようで、甘いものはより甘く、辛いものはより辛くなります。友人や家族と自然の味を堪能しました。 選択講座の「農業」や、田んぼ部の部活動として携わる方法もありましたが、自然農法にこだわっていた僕は自主活動として取り組むことに。農業講座を担当する教員に相談したら、予想外に広い土地と向き合えることになりました。そういえば適度に支えてギリギリまで手を出さない自然農法は、この学園のあり方にも似ていますね。そのせいか普段は目立たなくても、豊かな感性や価値観を持ち、深く物事を考えている人が多いように感じます。おかげで3年間の学園生活でさまざまな経験や感覚を味わうことができました。 今後も畑仕事をしながら、環境問題について知識を深めています。政治や経済、教育など関連する幅広い学びの中で、発見できることがたくさんあるのではないかと期待しています。「自分で作って、自分で食べる」を環境問題の糸口に。描くということを通して「私って何だろう?」の答えを探していました。2014年度卒業。高校在学中より自然農法による野菜栽培に親しみ、卒業後も同農法を実践的に学ぼうと「Azumino自給農スクール」(現・自然菜園スクール)に通う。17年より大正大学人間学部人間環境学科環境政策コースに在籍。2015年度卒業。高校では民族舞踊、音楽、数学、生物、絵画とさまざまな方面に関心を寄せる。武蔵野美術大学造形学部油絵学科へ進学後、アートと音楽をコラボレートさせた個展を不定期で開催中。肥料も農薬も使わない農法は、試行錯誤の連続だったとか。先日、個展を開催した石居さん。会場では弾き語りのライブも行いました。山本空洋石居由望さんさんある卒業生たちの歩き方0244

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