卒業生インタビュー

第11期生

森本 いずみ さん

morimoto

音楽療法の道に進んで

自由の森を卒業してすぐに渡米。アメリカでは高校 のころから興味があった音楽療法を学び、まもなく音楽療法士のインターンとして、カリフォルニア州の病院に勤務する予定の森本いずみさん。今回は仕事の準備に忙しい中、自由の森時代のことや、現在の状況についてお話をうかがうことができました。

 

まず自由の森時代のことお伺いしたいのですが、覚えていますか?

「覚えてますよ。学校は好きだったけど、積極的にイベントに参加するような生徒ではなかったですね。でも、自由の森には『出会い』がいっぱいあった。一番大事なことだったなって思っているのは、同年代ではない人や教員のような、本来なら自分のテリトリーではない人たちとイロイロな話ができたこと。いろんな人と接して、みんなの意見や考え方を聞いていくうちに、少しずつ自分の世界が見えてきたんじゃないかなと思うんです。そういうことが一番勉強になりましたね。」
 

在学中、特に印象的だったことってなにかありますか?

「楽しかったのは高3の修学旅行かな。修学旅行は高校3年間で一番楽しかったかも。自由の森の修学旅行は、大人数で行かないあたりが私好みでした(笑)。イロイロなコースがある中で、私の行ったコースは「岩手の分校コース」。25人くらいのちっちゃいコースだったから、ほんとに手作り。一人ひとりが真剣に取り組んで充実したコースにできたと思います。自由の森の修学旅行、あれは自由の森だからこそできた体験だと思いますね。」
 

どんな修学旅行だったんですか?

「分校で現地の生徒といっしょに授業を受けたり、歌をうたったり、岩手の名所を観光したりっていうコースです。そのうち何泊かはグループに分かれて、民家にホームステイをさせてもらいました。私たちが泊まった家の人は、でっかいいくら丼とか出してくれてほんとにおいしかった!海の幸は新鮮だとこんなに違うんだ!って改めて知りましたよ。ちなみに3人しかいなかった男の子達は、みんなで漁師さんの家に泊まったようで、早朝には漁を手伝って、みんなで船酔いしてグッタリしていたみたいでした(笑)。」
 

修学旅行にとどまらず、たくさんの人と出会いのなかで、いろんな話をして、それがなにかしらの形で今の森本さんにつながっているんでしょうね。今、森本さんが専門としている「音楽療法」には、在籍中からすでに興味があったと聞いていますが、いったいどんなふうに「出会った」んですか?

「音楽療法とは自由の森で出会ったんです。最初はなんとなく教員から聞いただけでした。あとから興味がドンドン湧いてきて、本とか、学べる大学を紹介してもらったんですよ。それで卒業してすぐワシントン州の語学学校に通って、まず英語をがんばりました。それからカリフォルニア州に来て、一般教養を2年くらい学び、その後音楽療法学のプログラムがあるノースリッジの大学に転校して、ようやく専門の勉強を始めることができました。」
 

音楽療法とはどんなものなんでしょうか?

「音楽療法はある意味、薬と一緒だと思います。音楽にすごく反応するひともいるし、反応しない人もいる。そういう意味で薬と同じですよね。薬も、全然効かない人もいます。わたしは、音楽療法が「すべてのひとに効く」とは思わない。でも選択肢のひとつとして、とても大事だと思う。日本だと、精神科やカウンセラーでさえ、まだなかなか門を叩きにくい状況にあるでしょう。そうではなくて、精神科もカウンセラーも、それから音楽療法も、もっともっと選択肢のひとつとして自由に選べるような、そういうあり方に近づいていけたらいいなっと思っています。」

大学での「学び」はどうでしたか?

「大学にはクリニックが併設されていて、現場を見ることができるんです。プラクティカルっていうのがあって、そこにはスペシャル・エイド(いわゆる痴呆症とかダウン症とかの子供)とか、両親がいない10代の子、両親が精神的に普通の状態ではない子ども達など、とにかく親が子供を世話できる状態ではない家の子ども達が来ていたりします。そのほかにも、社会生活がうまくできない子どもたちを集めている場所があって、不登校児や人とうまくコミュニケーションがとれない子、薬を過剰に服用している子たちですね。そういう子たちをケアしている現場をみたり、途中からそういうセッション(治療)を行なう場に、関わっていける場所が学内にあるんです。これがすごい勉強になる。」

現場での学びを重視した大学だったんですね。

「そうですね。ノースリッジの大学は、実際の「場」を学習の場として開いているんです。プロの音楽療法士さん達がどんなふうに治療していくのか現場を見て学べる。もちろん机の上での勉強もためになりますが、外に出て患者さんといるのが一番勉強になった。」

現場で大変なことなどありましたか?

「精神科病院の現場に行って音楽療法をやった時かな。そのときは、音楽療法どうこう以前にずっと怒ってる人がいて。入ってくるなりもうカンカンなんです。「なにを怒ってるの?」と聞くと、「部屋を装飾したのに、誰も気づいてくれなかった。」ていうんですよ。そのときは音楽を流しながら物語を語ることから始めました。

「あなたは森のなかに居ます」

 と話し始め、まずはリラックスするようにします。リラックスすることが大切なんです。それから「大きな木をみつけました。穴があります。穴をのぞくと、箱があって、箱のなかには、あなたにとって一番大切なものがありました。」そう話した後、その自分にとって一番大切なモノをそれぞれ書いてもらった。それから、どうしてそういうものが見えたのかも聞いていきます。怒っている人は、「手榴弾が見えた」そうです。どうして?と聞くと、「今日は怒ってるから、スタッフ全員に投げてやりたい。」と言うんです。「投げたらどうなるかな?」というようなことを少し話しました。

それから治療のときは、楽器を置いておくんです。楽器を一つ選んでもらい、「いまの気持ちを弾いてみましょう」って、やってみるんです。彼はドラムだか打楽器を、バンバン叩いてた。その人のやりたいようにやらせます。そのひとの音楽がどうこうについてはジャッジ(判断)や、コメントはしないんです。それで、そのあとに彼はかなり落ち着いていて、「今どういう気持ち?」て聞いたら、 「ちょっと気分よくなった」と言って。そのあとは、今まで見せることのなかった笑顔も、たまに見せるようになりましたよ。

ほかにも統合失調症とか、うつ病の人には苦労しましたね。難しかった。」
 

聞いているだけでも、イロイロなことが要求される、とてもデリケートな現場に関わっているということが伝わってきますね。今後は具体的にどんな職場に携わる予定なんですか?

「私の場合、精神科の方へ行きたいと思ってます。それはもう大変な現場ですが、自分の性格からして、あまり抱え込むことがないみたいだから、そういう大変な人たちのいる現場で働けたら、すごくやりがいがあると思っています。」
 

大変なお仕事ゆえ、なにかとストレスが溜まるかと思いますが、なにかストレス解消法とかってあるんですか?

「ストレス発散・・・そうですねぇ、インターンシップの面接でも聞かれたけど、私、イライラしないみたいなんです。ストレスがたまったりしないんです。面接でもそう言ったら「いや、絶対ストレスたまると思うよ」なんて言われました(笑)。だから「ストレスはないんです。」っていっても信じてもらえなくて。でも、どちらかというと、悲しい系に行くかな。へこんだりする。そんなときは、ピアノで曲を弾いたりしているうちに、落ち着いてくる。それくらいだと思います。」
 

どうやら意識しないうちに自己回復しているみたいですね(笑)。外国での生活は、どうですか?やっぱりストレスは溜まらない?

「えぇ、とっても楽しいですよ(笑)。あさって、6ヶ月のインターン(研修期間)のために、カリフォルニア州のナパってところに引っ越します。まだちゃんと仕事が見つかるか分かりませんが、インターンが終わったら、こっちで仕事を探してみたいと思っています。第一希望はロスのダウンタウンなんです。」

 

大変な現場に進み、人間と向き合っていくという営みを選んだ森本さん。今後のさらなるご活躍を期待したいと思います。
 

2004.6.27
インタビュアー・文:情報科 大友聡